よみとく10分 10分で読める伝記 2年生

書影画像
塩谷京子(監修)
発行:学研プラス
ISBN:9784052049828

全体を通して:エジソン、マリー・キュリー、ベートーベン、レントゲン、シートン、ダ・ビンチ、コロンブス、グリム兄弟、雪舟、牧野富太郎、安藤百福、手塚治虫の十二人の伝記です。

「1年生」では、10人の伝記でしたが、「2年生」では12人の伝記が載っています。また、一人分の文字数が20%位増えているでしょうか。使われる漢字は対象学年相応にレベルが上がっていますが、巻末の「おうちの方へ」以外にはすべてかながふられているので、就学前でもひらがなが読めれば自力でも読めるとは思います。

もしかすると「1年生」や「2年生」は、小学校に入る前の段階で、寝る前のお話として読んであげるというのが、一番効率的なこの本の使い方かもしれないです。載っている人物は身近なもののほか、学校教育で教えられる歴史・事象や「1年生」に載っている人物とのつながりも意識されて選ばれているような印象を受けました。

エジソン:やってみること、楽しむこと、考えたことのメモを残すこと、人と議論することが大事だということを教えてもらえます。エジソンが電気に興味を持ったきっかけとして電信(エジソンやベルの話で出てくる電信は、有線でのモールス通信のこと)が大きな役割を果たしていたようです。小学2年生基準で10分という文字数に制限のあるなかでも、蓄音機や電球などの代表的な発明にいたるまでのストーリーがうまくまとめてあります。

マリー・キュリー:基本的なことからの積み重ねが科学(自然科学でも人文科学でも)の道です。また、興味を持って自分で勉強を進めて行く力は、基本的なことを経験したり知ったりする環境がないと養われないと私は考えています。この伝記は、このことを思い出させてくれるお話です。ラジウムやポロニウムなどの元素やノーベル賞も、もちろん登場します。

ベートーベン:耳が聞こえなかった音楽家ということは知っていましたが、そこにいたるまでの生い立ちについてはほとんど知りませんでした。モーツァルトとも会ったことがあるのですね。エジソンとベルもそうですが、「10分で読める伝記 1年生」とのつながりが意識されていそうです。また、本文中にはナポレオンという人名がさりげなく登場します。

レントゲン:ほかの人物と比較すると少しあっさり気味かなと思いました。その中でもいろいろ試してみること、よく注意して観察することの大切さがメッセージとして伝わってきます。

シートン:幼少のころから動物好きで動物学者になったシートン。とくにシートン動物記を書くきっかけとなったエピソードが少し詳しく書いてあります。それはオオカミとの知恵比べといったものでしたが、オオカミの賢さと人間味を感じる行動に驚かされました。

ダ・ビンチ:世界史で重要な歴史的ポイントのひとつであるルネッサンス期イタリアの芸術家・発明家・科学者です。伝記の中で主に触れられているのは、ミラノの「最後の晩餐」作成時のエピソードです。日本の明治・大正・昭和初期を舞台にした物語やファンタジーものを読むのにも必要な知識のひとつである公爵(公爵にもいろいろありますが)という単語が出てきます。

コロンブス:やってみたからわかることもある、を体現しているようなお話です。ただ、誤解やあやまった情報をもとに計画を立ててしまっていますからね。古代ローマの学者たちの計測や理論が正しく伝わっていれば、あるいは、その方法で自分で実験して前もって確かめようとすればもう少し慎重になったのかもしれません。また、アジアの位置が正しく知られていれば、天文学から到達したのがインドではないことが自分でも分かったかもしれません。そんなことを、西インド諸島という名前をながめながら考えてしまいます。

グリム兄弟:人々につたわる童話を集めて本にしたグリム兄弟の話。幼いときから勉強家で、また、お金がなくて教科書を書き写したという兄弟は本にして情報を残し、伝えることの大切さを体感的に知っていたのでしょう。また、情報を正しく残すか、娯楽性を高めるかの葛藤があったような描写もあります。変えてはいけない情報、変えるときの前提などを、少しでも考えるきっかけになってもらえると良いなと思います。

雪舟:京都のお寺まで絵の勉強や修行に行ったり、中国に留学にいったりと結構アクティブに活動していたのだなと思いました。雪舟=水墨画、それだけでこれまで乗り切ってきましたが、ストーリーがあると印象に残りやすいです。

牧野富太郎:一部界隈では有名な植物図鑑の人です。「植物の研究をするならば、広く色々な学問を学ばなければいけない」というセリフが載っています。これは植物に限らず全ての分野において、また狭い意味での研究に限らず、楽しく生きるために共通することだと思います。

安藤百福:NHKの朝ドラで知名度が広がったインスタントラーメンの開発者ですね。この伝記には、身の回りでふつうにおきている出来事で、たとえ普段からそれが目に入っていても、それが見えるときと、そうでないときがあるのだということが込められているのではないでしょうか。いろいろなことを学んで知って考えて、見えるものを増やしていってもらいたいです。

手塚治虫:漫画家で、日本のアニメ文化創立の立役者。また、医学を勉強した医者でもあります。もし「将来の夢は何ですか」と聞かれたときに一つだけ答えなければいけないと考えているならば、このお話をよんでいくつも夢を持っていいのだということに気が付いてもらえればと思います。

(外部リンク)版元ドットコム
(外部リンク)GoogleでISBN検索
前◀
とんがり帽子のアトリエ
次▶
この先はありません