よみとく10分 10分で読める伝記 1年生

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塩谷京子(監修)
発行:学研プラス
ISBN:9784052049811

全体を通して:伝記として、こういう素晴らしい人がいたのだという気づきはもちろんだが、掲載されている偉人の出身や財産状況、大人になってからの職業などがバランスよく、偏見なく幅広い分野の常識を身に着けられる内容になっています。また、中学から高校・大学までつながるような話題も随所にちりばめられていて、そういったつながりも大事にしているようです。この文字数で、また読みやすい文で、よくもこんなに将来のための種を詰め込んだなと感心しきりです。

ヘレン・ケラー:自らもハンディを負いつつ障害者福祉にまい進したとの評価で知られている。しかし、この外伝からはそれよりも、物事に気が付くのには何らかのよき教師(それは親や、その他の環境かもしれないが)が必要で、その物質や現象などに自分の中で名前が付けられることが、そのことを理解することへの第一歩なのだなということを感じました。

ファーブル:昆虫記の人というイメージだが、出版は第一巻が55歳のとき。違う考えの本に出合う大切さや、別の視点も大切なことや、長い時間あきらめずに楽しんでいければ何かのきっかけで発見をしたり、何かを遺せることなどが伝わってきます。

モーツァルト:本書では天才として描かれています。全面を見せるとこの本の趣旨からはちょっと外れてしまいますからね。思春期以降に知る楽しみとして取っておいてくれていると思いましょう。

ライト兄弟 :お母さんがかなりガチのエンジニア気質だったということを知りました。設計は大事です。飛行機も、ちゃんと勉強し、紙の上で計画を立て、模型で何度も実験してつかみ取った成功ということでしょう。

ナイチンゲール:ナイチンゲールは、幅広い教育を受け、おそらくそれを基盤とした、科学的思考(特に疫学分野)や、図を用いたわかりやすい説明手法を考えたりといったことが活躍につながっているのだろうと考えているが、10分という制約上のためか、本編ではあまり語られていない。もっとも、巻末のおまけで少し記述があるので全く言及されていないわけではありませんが。本編は看護師になったきっかけや、クリミア戦争での活動、看護師教育への貢献などが主に語られています。クリミア戦争が話題に出てくるので、フランス革命、ナポレオン、ウイーン体制など、世界史の重要な出来事にもつながります。

ディズニー:あきらめない情熱と細部へのこだわり、そして支えになってくれた者(ねずみも含めて)の存在がディズニーの成功の秘訣だろうか。

ベル:電話の発明で有名なベルだが、電話の発明まではろう学校の先生としても活躍していたようですね。電信という仕組みがあったことに触れられており、これに使われたモールス符号は、符号化理論や暗号理論など、現在の社会を支える情報技術につながっている。また、ヘレン・ケラーとはかなり深いかかわりがあるようです。

一休:とんち話で有名だが、頭をつかって考えて物事を解決していくことに長けた人なのだなと感じました。伝記からは、とても心優しい人物像が感じ取れました。

角谷英二:ゴジラやウルトラマンなど特撮映画や特撮のテレビシリーズをつくりだした人です。ディズニーのアニメもそうだが、子供たちに、世の中にはこういった仕事もあるんだということを知ってもらうことは、いろいろな仕事があるという気づきになってとても良いとことだと思います。また二人とも会社を興していることが共通する。会社を興すことがこれからの日本ではもっと身近になるかもしれないので、そういった話題が盛り込まれてるのも好感がもてます。

野口英世:華々しいところだけ切り取られているような気もしますが、趣旨が違ってきますのでやはり思春期以降の楽しみとして取っておきましょう。貧しい家に生まれ、幼いときの事故で学友にいじめられながらも、勉強が自信につながって、どんどんと良い方向に向かっていく人生が描かれています。知識はだれにも奪われない財産です。

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